新世紀いんぱくつ。

どうしようもないこと
「センチメンタルな予感」by 新世紀いんぱくつ。

全部

忘れてく 忘れてく

君と見たこの風景さえ

流れてく 流れてく

なんだか不意に切なくなる

新世紀いんぱくつ。「センチメンタルな予感」



主人公以外の、その他の群衆のこと。
“モブキャラ”のはなし


新世紀エヴァンゲリオン

この、タイトルのアニメーションを語るには、ちょっと私の力不足であります。

シン・エヴァンゲリオン
https://www.evangelion.co.jp
エヴァンゲリオン公式サイト
エヴァンゲリオン公式サイト

ご存じかと思います。

内容は知らずとも、名前は聞いたことあるかと、思います。

めちゃくちゃ、煩雑なあらすじをご紹介すると・・・

ざっくりですからね!?


西暦2000年、大災害「セカンドインパクト」が起こり、人類の半数が死滅。

主人公の碇シンジは、汎用人型決戦兵器 エヴァンゲリオンに搭乗し、いろいろな理由で襲来する「使徒」と呼ばれるナゾの敵と戦う。

という、ざっくりなあらすじです。

ちなみにこれが、

汎用人型決戦兵器 エヴァンゲリオンです。

エヴァンゲリオン 初号機
https://x.com/evangelion_co/status/1791374230443139357?s=61&t=1ZkinH4QEIRZaeU_fSSllw



そしてこいつが、「使徒」(敵ですね)のひとつです。

使徒:ゼルエル
https://dic.pixiv.net/a/ゼルエル
ゼルエル
ゼルエルとは、ユダヤ・キリスト教伝承に登場する天使。または新世紀エヴァンゲリオンに登場する使徒と呼ばれる敵の一体。


結構、人間どもが、上に示した「使徒」をぶっ倒すために、いろんな武器や兵器などを利用して戦うわけです。でも、全くもって、歯が立たない。

ですから、先ほどの”汎用人型決戦兵器”エヴァンゲリオンが出動!するわけなんです。

結構、むごい戦いをするわけです。

割とマジで総力戦、旧日本軍の最後くらいの戦い方をします。

歯が立たないとわかっていつつ、人間どもは兵器を投入します。

エヴァンゲリオンも、割と容赦なくタコ殴りにします。

反対に、使徒もめった撃ちしてきます。


さて、あらすじとかはこれくらいにしましょうか。

反論買うとイヤなので・・・

はじめに

本記事は


アニメ「新世紀いんぱくつ。」
の考察記事です。



エヴァンゲリオンの作品では、パイロットであるキャラクターやそれを支える仲間、本当の敵、などを描かれます。



モブキャラクター

つまり、名前やセリフもない、ただそこにいるだけのキャラクターは描かれません。

というよりも、背景と化しています。

これはどのアニメもそうですが。

モブキャラクター。

争いに、勝手に巻き込まれ、被害を受ける。

作品「新世紀エヴァンゲリオン」における、
「モブキャラクター」に注目した作品。

これが、本作品。

新世紀いんぱくつ。です。


日本アニメ(ーター)見本市-同トレス-チャンネル - ニコニコチャンネル:アニメ
スタジオカラー・ドワンゴが贈る短編映像シリーズ「日本アニメ(ーター)見本市」 オリジナル企画・スピンオフ企画・プロモー...


本作品に登場するキャラクターは三人。

いえ、モブキャラクター。

・石井ハルカ (Gt./Vo.)

・谷口イズミ (Ba.)

・松沢アヤコ (Key.)

アニメー(ター)見本市 第32話
新世紀いんぱくつ。
左から イズミ、ハルカ、アヤコ
https://ameblo.jp/evacollection/entry-12074698135.html より引用
『★日本アニメ(ーター)見本市 第32話「新世紀いんぱくつ。」配信開始!』
『エヴァンゲリオン』スピンオフ作品となる「新世紀いんぱくつ。」が日本アニメ(ーター)見本市で配信スタート!<あらすじ>時に、2015年。使徒襲来が激化する、第…

三人は、バンドを組んでいます。

バンド名は、

“いんぱくつ。”

本作品は、バンドを題材としたアニメでもあります。

そして、作品の冒頭では、彼等が、

いんぱくつ。の新曲をニコニコ動画へアップロードするところから始まります。

新世紀いんぱくつ。

疎開

バンドのメンバーがひとり、ひとりと。

疎開していく。

そんな始まり。

いんぱくつ。が解散してしまう。

そんな物語。


疎開。

にげること。

使徒が、世界を壊すから。

世界が、壊れてしまうから。

当たり前だった日常が、失われてしまうから。

当たり前の生活は、延長線上にはないから。

私たち、モブキャラクターは、逃げることしかできないから。


パイロットのように、街を守る能力なんて備わっていない一般人。

彼等はまさに被害者。搭乗者もそうだけれど。

自衛としての、疎開。

彼等は子ども。中学生。

親の意思による疎開。

彼等の意思は、尊重されない。




はじめ“に”、疎開をしたのはアヤコ。

アヤコは、バンド、いんぱくつ。にて。

Keyboard、Synthesizerでしょうか、電子鍵盤を担当している。

冒頭の、動画サイトにアップロードをするシーンで、もうその事実は決まっていた。


アヤコとの別れのシーン。ここでは音がない。BGMだけ。

きっと彼等の心情を表しているのだろう。と私は紐解く。

当たり前が当たり前でなくなる。

人生ではよくあること。

しかたがないこと。




そして。

イズミも疎開することを、ハルカに伝える。

ふたりだけの思い出

アヤコが疎開した。

残されたハルカとイズミ。

イズミは自動販売機で購入した、ブラックコーヒーを差し入れする。

ハルカは、未だこの事実を受け入れられない。



そして。

イズミも、ハルカに疎開することを伝える。

声を失う、ハルカ。

しかたがないこと。

しょうがないこと。

どうしようもないこと。

決定権のない、子どもたちは、守られる立場。

守る立場の言い分には逆らえない。

何よりも、争いの絶えない世界に、逆らえない。




私たちは、モブキャラクターだから。

私たちには、何の力も持っていないから。



そして、ふたりだけの思い出。

ふたりで会うのは最後だから、思い出をつくるために、キスをする。

ふたりだけの思い出。

コーヒーの、苦い思い出。



そして、叶わない約束をする。

叶わない約束

イズミはハルカに言う。

中学校を卒業したら、同じ高校へ行こう、と。

アヤコも誘って、皆で集まって“いんぱくつ。”を再結成しよう、と。

叶わない約束を、提案する。


純粋無垢なハルカ。

本作品の主人公。いや、モブキャラクターのひとり。

ハルカは、また、できると、勘違いする。

心から喜んでしまう。

私は、心が痛い。

純真無垢。精粋。なにも知らない。

イズミもそう。

果たせぬ約束に、思いを馳せて、ふたりは別れを告げる。

「未来は明るいじゃん!」


という、ハルカの言葉。哀しい。

こんな世界で、二度と会うことはできないのに。

永遠なんてないのに。

あっけなく、大切なものが、失われてしまう世界であることに気付いていない。




そして、おわりに。

肉屋のメンチカツを食べて帰ろう、という言葉で、物語は締めくくられる。

思い出が、過去になる。

センチメンタルな予感

叶わない約束を果たしたあと。

曲「センチメンタルな予感」とともに、

これまでの彼等の思い出が流れていく。

いんぱくつ。としての思い出が流れていく。

これは、主人公、ハルカ視点の記憶として、描かれていると私は考察する。

数えきれない思い出があっただろう。

大切な思い出があっただろう。

取り返しのつかない、記憶だろう。




この世界では、四季がない。

物語はすべて夏の世界で描かれている。

エヴァンゲリオンと同じ。




思い出が流れていく。

ハルカの視点。

次にあらわれるモノ。


使徒の、襲来。


エヴァンゲリオンと使徒との争い。

私たちはモブキャラクターだから。

ミサイルが打ち出される。私たちにできることはない。

逃げることしかできない。私たちはモブキャラクターだから。

地下鉄で非常事態との宣言。赤いシグナルサイン。

私たちはなにもできない。

モブキャラクターだから。

不安。

戦車から打ち出される砲撃。使徒との戦い。

直接的な表現はされない。

私たちには無関係だから。

できることは、ないのだから。

モブキャラクターだから。


逃げ惑うハルカ。

砲弾の衝撃で、転ぶ。

燃え盛る火の海を見つめる瞳。

その瞳には。

殲滅された、使徒の十字架の光。

呆然と見つめるハルカ。




そして、ハルカはシェルターの中で蹲る。

蹲ることしかできない。

だって、私たちはモブキャラクターだから。


ブラックアウトの繰り返し。

曲「センチメンタルな予感」のドラムに合わせ、

いんぱくつ。の仲間が、ひとりずつ。

きえていく。


真っ暗な、明かりひとつない、

シェルターの中で蹲るハルカ。

エヴァンゲリオンと、使徒との争いは収まらない。

砲撃音と爆発音は鳴りやまない。

使徒の攻撃する音、エヴァンゲリオンが対峙する音。

モノが壊れる音。

大切なものが、崩れ去る音。

失われていく音。


そして、闇に消えていき。


物語は終わる。

私たちは、モブキャラクターだから。

できることはない。

壊れてく 壊れてく

大切なこの想いさえも

消えていく 消えていく

そんな気がするんだ

新世紀いんぱくつ。「センチメンタルな予感」

おわりに

感想

なんと、後味が悪い物語であろうか。

と率直に、私は思いました。

本作品は、6分程度のアニメーションです。

そして、その大半が、

曲「センチメンタルな予感」です。

エヴァンゲリオンという作品が大好きです。その作品の中で、モブキャラクター、本来ならば名前もセリフも与えられないキャラクターを中心に、物語が構成される。

それだけで、私は興味を持ちました。

また、本作品とこの曲が、非常に対照的に、

in contrast になっている。

爽快な曲調である反面、物悲しい歌詞。

救いのない言葉で締めくくられる。

おわりの瞬間に、思い出したのだろうか。

それとも、

果たせない約束であったことに気付き、

惨めで、醜態であると感じ、思ったのか。



物語自体、見ていると、救いのない話であることは容易に想像できます。

それでも、ラストシーンでは、想像以上に心を抉られました。

どんな世界でも、果たせない約束はあります。

特に、生まれた時代や環境によって、それに大きく影響を与えます。

残酷です。

でも、このアニメは、俯瞰的に、事実を語ります。

おわりはいつだって、時間と場所を選ばない。

現代でも、それになかなか”気づけない”だけ。



そして、この物語で語られる中心。

モブキャラクター。

私たちが生きるこの世界、この人生。

これもひとつの物語。

それぞれの人生、あなたたちが主人公です。

私は、あなたたちからしたらモブキャラクターです。

同様に、私からしたら、あなたたちはモブキャラクター。

モブキャラクターにも、人生はある。

モブキャラクターも、生きている。

モブキャラクターも、苦しんでいる。

戯言

戯言1

二つ、戯言を残したいです。

一つ目。

この作品は、登場人物は三人です。

実は、どれも声優が、林原めぐみ氏なんです。

つまり、一人三役。すごい。

林原めぐみ氏といえば、それこそ「新世紀エヴァンゲリオン」のキャラクター、

綾波レイを演じています。

綾波レイ
https://www.evangelion.co.jp/1_0/banner.html より
EVANGELION.CO.JP リンク
新世紀エヴァンゲリオンが10年ぶりに映画化。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」2007年9月1日公開決定(全四部作予定)。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」公式サイトでは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の最新情報やエヴァ関連情報を随時更新。

レイ・アスカ・(マリ)論争もありますが、私が好きなのはレイちゃんですね。

さておき。

「新世紀いんぱくつ。」は、日本アニメ(ーター)見本市の作品です。

残念ながら、こちらは解散してしまいましたので、作品を見るツールがありません。

あまり推奨はしませんが、某動画サイトにて、検索すると出てくるかもしれません。

戯言2

二つ目の戯言です。

他の考察記事を読んでいた中で、まったく同意見の方を見つけました。

このアニメーションを見たとき、私はある作品を思い出しました。

藤子不二雄(当時発表時はこのハンドルネームなので、敢えてこの表記にします。)作品のひとつ。

“ある日……”

という作品です。

ある日……
著 藤子不二雄
https://x.com/doraemonchannel/status/1356165394474520581?s=61&t=1ZkinH4QEIRZaeU_fSSllw
ある日…… - Wikipedia

Wikipediaにて、あらすじを読んでいただけたら嬉しいのですが、もしかすると知っている方も多いのではないでしょうか。

こちらも簡単に、あらすじと内容を紹介すると。

ある友人たちが、趣味の映画を紹介し合い、それらを楽しんでいる。

その中のひとりのキャラクター、佐久間。

佐久間は、どの作品も面白くない、と言い、自分の持ち寄った映画を友人に見せる。

その映画は、単純な日常を写したものである。

通勤風景、昼下がりの公園、買い物に行く主婦、遊ぶ子どもたち。

そんな単純な日常。

そして、「プツン…」との音で、終わる。



そんな映画である。それだけの映画である。

たかがそんな映画だと思いきや。

佐久間が紹介した、この映画は。

「ある日」、突然に前触れもなく、核戦争が始まって、市民の生活が消滅した、という結末の映画である。

周りの友人たちは、唐突すぎる、伏線はない、説得力もない、等の意見を述べる。

それに反論し、佐久間はこう述べる。

「ある日」は「唐突」にやってくる。

「伏線」など張るひまもなく。

「説得力」のある破壊なんてあるものか。

「ある日」がいつくるか…

今日にも…。

著 藤子不二雄「ある日……」より 佐久間

と、佐久間が言ったのち。

最後のコマでは、白塗りの背景に、

一言だけ。

「プツン……」



と綴られ、作品は終わる。

というのが、「ある日……」のあらすじである。



今回考察した、新世紀いんぱくつ。とは少しテイストは違いますが、なぜか私はこの作品を思い出しました。

終わりはいつか来る。

それも唐突に、伏線もなく、説得力なんてなく。

きっと、核戦争でのおわりというのは、

ミサイルの発射ボタンを押した人以外はすべて、モブキャラクターなのだろう。

私たちもそう。誰かとの別れ。

唐突な別れ、伏線のない別れ、説得力のない別れ、こんなものばかり。


ハルカ、イズミ、アヤコ、三人は、薄々気づいていたのかもしれない。

ただ、誓った約束が、果たせないことには、気づいていなかった。

記憶も、思い出も、流れていく。

壊れていく。

消えていく。

そんな気がしたんだろう。

いつか描いた未来や

いつか感じた気持ちや

いつか見たあの景色を

なぜか今思い出すよ

新世紀いんぱくつ。「センチメンタルな予感」
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