みんな大人になってく
1人道を歩いてだけどいつもついてくる
そんな思い出作れたらいいのにな自由達がかけよる 真っ白な広場で
時計の電池とりだし 投げ捨てた時間なんて存在しないから
Whiteberry「通学路」
通学路。
通学路。
学校までの、道。
きっと、みんな通ってきた道。
みち。
ちいさな体で。
重たいかばんを背負って。
ひっしに歩いたみち。
たいへんだったね。
春の日の、初めて通った通学路。
今では、桜をのんびりと眺める心の余裕なんてないけれど。
雨の日の、長靴で歩いた通学路。
今では、長靴なんて、もうしばらく履いてないね。
暑くて、茹だるような季節の中、軽くなった水筒を持って歩いた通学路。
今では、自動販売機で簡単に、大人に見えたコーヒーを買って飲んでいるね。
台風で早帰りになった、風が吹き荒れる通学路。
今では、台風はただの厄介な災害だね。
頭の項垂れた稲穂を横目に、季節を感じた通学路。
今では、稲穂が実ることさえ、気づかずに過ぎ去ってしまう短い季節だね。
雪が降って、銀世界という名の非日常を感じた通学路。
今では、雪が降ると、運転の怖さが増すだけだね。
通学路。
もう通らない通学路。
通学路。
今でも、通る通学路。
通学路。
いつか過ぎ去ってしまえば、遺るもの。
私が眺めていた、田んぼが広がっていた通学路は、今はもうない。
通学路。
あの頃は、皆で通った道。
今では、みんな。
それぞれ、大人になっていく。
ひとり、道を歩いて。
それぞれの、通学路を歩いて。
私の通学路。
いつになったら、目的地に着くのだろう。
目的地に着いた人は、いるのだろうか。
時間なんて、存在しない。
存在したのは、通学路だけ。
一緒に通っていた人たちとは、二度と会わない。
会うことはない。会わない。会えない。会いたくもない。少し会いたい。顔も見たくない。
次第に忘れていく、あの頃見ていた景色。
それでも遺り続ける通学路。
大きくなった体で。
今、再び通る。
あの頃と、何が変わっただろう。
何も変わっていないだろうか。
みんなは、変わっていく。
私も、みんなから見たら変わってしまっていってるだろうか。
それは、良いことなのだろうか。それとも。
それぞれの通学路。
交わり、交錯することもあれば、平行に漂い、交わり合わないこともある。
交錯も、平行でもなく、ねじれの位置にあるかもしれない。
それぞれの通学路。
通学路。
通学路。
みち。
あなたも、わたしも、ちいさな、ちいさなからだで、通ったね。
どこへでも行けると思っていたね。
どこへでも、行けなかったね。
通学路。
私だけの通学路。
あなただけの通学路。